目次
山鹿の風景

山鹿のヤマノテさん。
この場所は、これからそう呼ばれることになる。

大宮神社へ取材に伺ったのは夏の暑い盛りだった。
「暑いね〜」
もう、何度も同じ事ばかり言っている。

大宮神社
大宮神社のご神木

大宮神社に入ると、すぐに大きなご神木が目に入る。
「・・・・・・」
無言になってしまうほど荘厳な雰囲気だ。
反対側には灯籠が奉納されている建物があり、中に入る。
「これは綺麗だね!」
これまでの厳かな雰囲気から一転し、照明で照らされた灯籠が何台も並んでいる。
「見て!中まで精巧につくられている」
「こちらは掛け軸まで見えますよ!」
関心しきりだ。
山鹿灯籠といえば、石灯籠姿を紙で作られた頭に乗せる"あれ"(金灯籠)を想像した人がほとんどだと思うが、実は違う。
建物などを山鹿灯籠独自の手法で計測し、紙だけで作り上げていく紙灯籠のことである。
その寸法は実測したかのように性格で、細部まで精巧に作り上げられている。

その正確さを物語る事例がある。 今では、観光名所となっている「さくら湯」。 さくら湯 実は、紆余曲折を経て現在の姿となっている。
現存する姿はかつてのそれと同じだが、過去には一度、複合商業施設の中の温泉施設という姿に変貌を遂げている。
その後の時代変化に伴って複合商業施設は減築され、さくら湯は再び現存の姿に再建築された。
再建築に伴い、設計図が必要になるわけだが、図面を書き起こす際の重要資料となったのが、山鹿灯籠でつくられた「さくら湯」だったのである。
山鹿灯籠の特徴である精巧さは、建物がそのままスケールダウンしたかのような正確さだったという。
ではなぜ、山鹿灯籠が現在のような進化を遂げたのか…
それはまた、別の機会に。

石畳

大宮神社をあとにし、「紙」に焦点を当てた企画展が行われている会場へ。

キッコーヤ

今回の目的はここである。
「こんにちは」
中には女性が一人。冨田さんだ。
店内には、書道家・画家・灯籠師・作家などの、紙で作られた作品が綺麗に展示されている。
「わあ!綺麗だね」
「こっちも見てくださいよ!」
私たちは既に大興奮だ。
「あの…」
冨田さんへのご挨拶もなしに、作品を見て回っていた。
「はじめまして!取材に参りました。宜しくお願いいたします」

紙モノ展

今回取材に伺った目的はこうだ。
ヤマノテという、手仕事作品などを取り扱う面白い店舗ができると伺ったのである。
そのイメージに近い企画展が、今回の「紙」をコンセプトにした企画展というわけだ。
それは取材せねばなるまい。

「ガラガラ・・・」

思い思いに作品を見ていると、今回の企画展にも参加している灯籠師の中村潤弥さんが入って来られた。
中村さんは、これからできる「ヤマノテ」店舗の2階に工場を構えている若手の山鹿灯籠師である。

山鹿灯籠1

中村さんには、ある縁で自宅を取材させて頂いた経緯がある。
もう2・3年前になろうか。
当時は、灯籠師になられたきっかけや、山鹿灯籠についてお話を聞かせて頂いた。

中村潤弥さん

お話を伺った最後に、灯籠制作の技術を駆使して制作された面白いペン立てを見せてくれた。そのときの、茶目っ気のある笑顔が印象的だったのを覚えている。
その後、山鹿灯籠師のなかでも一際若い中村さんは様々なメディアの取材を受けてこられたようで、飛行機の機内誌や雑誌でも度々お見かけする。
「どうもー!」
ほんの数年前にお会いしているのだが、当時と比べて凄く精悍な印象だ。
それでもニコリとされた時の笑顔、これは変わらない。
なんだかホッとする。
「お忙しくされているようですね。」
きっと、数年でいろんな事に挑戦してこられたのだろう。
表情や佇まいにそれがあらわれている。
こちらが圧倒されそうだ。
「今は、奉納する灯籠の追い込み時期ですよ」
そうか、そういう時期だった。
「もう直ぐですもんね」
山鹿の夏は、山鹿灯籠祭りで山場を迎える。
金灯籠(かなとうろう)を頭に乗せて踊る"あの"様子は、あまりにも有名だ。
だが、山鹿灯籠師の真の見せ所は"上り灯籠"という別のところにある。
建物などを山鹿灯籠で制作し、各町内に展示するのだ。
町内ごとに制作するものは違い、山鹿灯籠祭りのフィナーレとして、灯籠は神輿に担がれる。そして、大宮神社に奉納される。
それが、上り灯籠である。

上り灯籠

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